天宮 インタビュー

自分たちの音楽に素直である、衒いもなく、肩をいからせることもなく、ノビノビと 自分の音楽を楽しんでいる。

ギタリスト天野丘(あまのたかし)とピアノの宮前幸弘(みやまえさちひろ)を核に 若手ミュージシャンが、 1枚の清々しい作品を作りあげた。

メンバーは天野丘g 宮前幸弘p 緑川英徳as 林正男b 千光士実ds の5人。 都内近郊のライブハウス等でお馴染みのメンバーである。

天野が自らのスタイルを模索している時代の演奏を知っている私は その時代の努力が、見事この作品で実を結んでいるのを知る。完璧に自分の音楽を作 り上げているのである。

しかしその自信たっぷりな気持ちは、その気取りのないリラックスした演奏に隠れて しまっているようだ。 新しいタイプのジャズというと、過度に力が入りすぎたりするものだが、 天宮の音はどちらかというと、快いのである。適度の緊張を伴う快さである。

CDは全曲、天野と宮前の作品で占められている。

オープニングを飾るのは天野の作品で、敬愛するスティーヴ・スワローをイメージした曲。爽やかで少し憂いのあるテーマが美しい。(swallow's tale)また宮前が愛妻に捧げた小品や(Sophia)、印象深いメロディの作品(Everlasting,Bless from heaven)パスコアール??の世界を感じさせる (The march hare-プログレかな?でも響きは明るい) そして最後に天野の父に捧げたSeventy eight?で静かにCDは幕を閉じる。

このCDを聴いて感じたことだが、熱い演奏やソロでも決してベタベタしない雰囲気が良い。 新しいジャズにありがちな、複雑なメロディもスケールも感じられない。 全てが自然体なのである。肩の力が抜けている

各メンバーの力量もさることながら、やはりこのバンドは天野と宮前の曲の魅力に負うところが多い。二人とも素晴らしい才能の持ち主だ 特に天野の曲はロマンチックでよく歌うメロディ。 宮前はバラードよし、リズムものもよし。といった感じだ。

そこで、早速、天宮バンドを率いる 二人、天野丘と宮前幸弘に話を聞いてみた。

天宮/ファースト(TENKYU FIRST  Polystar Jazz Library/JAZZ BANK MTCJ-1025)  定価¥2,800

Check CD  

Takashi Amano guitar
Sachihiro Miyamae piano
Hidenori Midorikawa alto sax
Masao Hayashi bass
Minoru Senkouji drums

レーベル: JAZZBANK(Minton's House)/Polystar Jazz Library
制作:JAZZBANK,INC.(tel)03-3941-0647.
販売:3D SYSTEM CO.,LTD.(tel)03-5725-1553.


ちっく@CyberFusion
天宮ファースト素晴らしい出来でした。なんというか、爽やかでいいよね〜。ジャズというと、なんか重いでしょ(笑)
 で、ファーストCD、バンド結成にあたってのコンセプトというか、狙いというのはあったんですか。

天野
狙いは、というよりバンドそのものを組む要因となったものは、オリジナルだけを演奏するあるいはオリジナルなアレンジを施したいという欲求がある、魅力ある曲を演奏するために集まった二人(宮前と天野)なので、曲自体がコンセプト、といえなくも無いので、「こういうディレクションで、、、何々風に、、、」といった種類のコンセプションはないですね。という面もありますし、こういうコンセプトで、どんな作品を、というオファーがあった場合は、もちろん適応出来るように仕事するわけですけど、もっと自分のほうにそのコンセプトを近い存在にするために時間はもっと掛かったでしょうね。逆に言えば、今回の場合、好きにやらせてもらえたので、その点、全く普段の演奏の状況を変えることなく(アレンジ等を含めて)ただレコーディングした、という感じです。
   リハは、、、やったんですけど、、、やっぱり、心配(笑)だから。でも、なんにも変わらなかった(笑)。

ちっく
うんうん。で、宮前さんは?

宮前
自分のバンドを立ち上げる以上、オリジナリティは非常に重要です。しかし僕の場合は言葉に明確に表せるようなコンセプトはありません。なんとなく「みんな自由に演奏していて、しかもまとまりがある」感じになればいいなぁ、と思っています。そのさい、人の曲(スタンダード)をやっているとどうしてもそれぞれの思惑がバラバラになってしまうので、僕や天野の曲で統一しているわけです。

ちっく
まず、お二人の曲があって、それを自由な雰囲気で演奏しましょう。と。敢えて、そういう形でやって、今回の作品のような、適度にリラックスした音楽になったのでしょう。メンバーが楽しそうに演奏している情景が目に浮かびますものね。別にコンセプトというのは、ゴリゴリでなくてもいいものね。お二人の曲が中心のバンドですが、あえてカバーとかはライブとかでやりませんか?

宮前
天野と僕の曲、あとdsの千光士実の曲が1曲ありますが、それしかやりません。
元々オリジナルのみのバンドを作りたい、という動機ではじめたんですが、その理由は、「だってロック・バンドでオリジナルのみのバンドなんて、あたりまえじゃ ん?」という事でした。
ジャズの場合はもともとお客さんの要望でスタンダードを「誰もが知ってい る」という前提でやっていたわけですが、ジャズ自体が超マイナーなジャンルとなっている現在、その意味合いは薄いと思われます。
「枯葉」をやっても誰も知らないなら、オリジナルをやっても同じ事でしょう。

ちっく
なるほど。説得力ありますね。天野さんは?

天野
宮前君とデュオでやっていた時は、僕はあんまり他人の作品は知らないから(笑)、自分のオリジナルばっかり、、、
宮前君はミンガスの曲を持ってきて二人でやったりしてました。
楽しかったな、、、ミンガスの曲って、なんていうか、僕にとっては、ハードロックみたいに自然にやりたくなったり、いろんな局面を(場面を)「曲自体」が見せてくれるん ですよね、だから、「へえ〜ビバップの始祖みたいな人は、やっぱりアバンギャルドだったのね〜」と納得してしまった。
エリントンなんかも(もちろん全てがそうではないんだけど)そういった「許容」を曲自体がもっている。
そういった曲達に自分達なりの敬意を持った返答が出来るならば、やっても良い、と初めて思っても良い、と。
僕はそう思うんですけどね。もちろん、人はそれぞれにやり方はあっても良いと思いますけど、当然。
でも僕としては、「再現」だけでは、、、第一出来ないし、やっても意味が無い、と。
まあ、演奏スタイルだけの問題ではないですけど。
まだまだ、出来ないですけど、僕はいつか必ず「今まで聴いた事が無い!」ものを創ることが出来たら、幸せなんですが、一生無理かも知れないけれど、いつもチャレンジはしていきたいです。
ちょっとハミダシが過ぎたかな?(笑)

ちっく
今まで聴いた事が無い!ものができたら、すぐ電話ください(笑)
根本的なところで二人の考えが近いところにありますね。今後より一層素敵な曲を期待します! 
でも、ホントしつこいですが(笑)僕としては、天宮が有名な曲をどう料理してくれるか。
というところにも、やはり興味があります。  

天野
自然に曲の方が近寄ってくるというか、そう言った雰囲気があればきっとやるでしょうね。
でも、とりあえず「コード進行が面白いから」とか、そういう理由で演奏はしませんから、、、
それが理由になるようなイージーなバンドの形だってありますから、セッションとか。
苦手なんですけど。ですので、カバーをする場合においては、気を付けるというより、カバーをやる場合にはやろうとするその時にもう既にどうなるかが(ある程度)見えているっていうのが条件ですね、多分。
そのようなわけで、所謂スタンダードは天宮ではやりません。

宮前
今後他の人の曲をやる可能性はあります。もう結構長いこと同じメンバーでやってきたので、いわゆるスタンダードの場合はとくになにも凝ったことはしなくとも天宮っぽいサウンドになるような気がします

ちっく
わかりました。もしカバーをするときは、天宮カラーで。ですね。
これ以上頼むと怒られるからしませんけど、ちょっと期待してます(笑)
え〜っと、最後にこれからの天宮はどこへいくのか(笑)知りたいです。
ファーストを聴くかぎり、どこかへ連れて行ってくれそうな音楽なんですね。
これからどんな風景を見させてくれるか。ちょっと知りたい(笑)

宮前
いやー、考えてないですね(笑)一方のバンマスとして、イカンのですが。
まぁ、元々芸術家とかクリエイターとか言うより、プレイヤー、演奏屋ですので、演奏活動を続けていくという行為そのものに答えがあるのではないでしょうか。
なんちて。何にも考えてない理由をもっともらしくしてみたりして。  

ちっく
天野さんは?どうですか。

天野
僕が思うには、新しい曲ができればすぐに試してみる、ということが出来るバンドなので、今のメンバーなら、「勝手に、しばらず、やってもらう」というのが、僕のモットーなので、音楽性がどんどん変わっていっても良いんですよね、
基本的に。そういった意味では、方向性はいろんな方角に広がっていって欲しいとは思っています。演奏する場所とか、聴き手の皆さんが思っているジャンルの枠も超えて行きたいし。今のままでは何処に身を置いてもはみ出る部分がありますし。
そういったことで悩んでいるミュージシャンはたくさんいるのではないですかね?
 ですから、メンバーのみんなが納得してやってくれる限りは、どんな事もこのバンドでやっていきたいし、きっと出来ると思っています。なにしろネタはアルバムあと3枚分ぐらいは持っていますから。
曲自体も、別に天宮の為にとか別のバンドの為にとか思って書いているわけではないですし、そういう風には書けないので。
その代わり、メンバーが自由に解釈して、「その人自身」が没入して、しかもその曲にしっかり存在理由がある、という、さっき言ったミンガス、エリントンの状態になれれば幸せだな、と。

ちっく
う〜ん。お二人とも、演奏を続けていく先に答えがあるという考えですね。
ネタはまだまだあるらしいので安心しましょう(笑)各メンバーが自由な演奏をして、それが一つの方向に向かったとき、ミンガスやエリントンの状態になれるように、期待して待っています。
どうもありがとうございました。

当初は 天宮バンドのリーダー天野丘氏と宮前幸弘氏と私とで、直接お会いしてお話を聞く予定でしたが、スケジュールがなかなか調整できず、また日を待っていると時間ばかりが過ぎていくので、残念ながら、メール交換という形で本インタビューとさせていただきました。この場をお借りしてお二人のご協力に感謝いたします。(ちっく)





尚 天宮バンドの詳しい情報、各メンバーのインタビュー等は、オフィシャルサイトで。
ファーストアルバムの情報はこちらで。
天宮へのメールでのお問い合わせはamaq@mars.ccn.ne.jpへ。     

Interview by ちっく
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