Russ Freeman Interview

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ご存知、アメリカのコンテンポラリージャズ界を引っ張るRippingtons(リッピントンズ)の創始者であり、リーダーでもあるRuss Freeman(ラス・フリーマン)が、久しぶりのソロアルバムをリリースする。1995年リリースのクリスマス・アルバム「Holiday」に続く3枚目のソロアルバムだが、シーズナルなテーマではなく純粋に本人の音楽を追及したソロアルバムということでは、彼のデビュー作でもある「Nocturnal Playground」以降、なんと16年ぶりのリリースとなる。既にRippingtonsとして独自の音楽を確立している中での今回のリリース、本人にとっても新たな挑戦だったようだ。

「一体、RippingtonsRuss Freemanの音楽のどこが違うのだろうか?いや、本当にどこか違っているのか?」

レコーディング中は本人なりの葛藤の連続だったと聞くが、最終的には「自分ですごく満足のできる音楽になった」とのこと。ではアルバムに込められた彼自身の答とは一体どんなものなのだろうか?果たしてRippingtonsとの音楽的違いを充分に表現できたのだろうか?途中、趣味のゴルフについてのリラックスした質問も織り交ぜながら、彼のソロアルバムに対する熱い思いを語ってもらった。もちろん、Rippingtonsの最新作である「Live Across America」や彼自身についてのコメントも必見だ。


Q1. 今回のソロ・プロジェクトはどのようにして始まったのですか?

Russ Freeman: (以下RF) 以前参加したアルバム「To Grover with Love」で、「East River Drive」って曲を演ってるんだけど、それがラジオで結構流れるようになってね。レコード会社の人が「ソロアルバム出してみたらどうだい?」って言ってくれたんだ。僕はもちろん「それはいいね。ぜひやりたいよ。」って答えたよ。なにせ「Holiday」以来ずいぶんソロはやっていなかったから。

Q2. 今回のアルバムのコンセプトはなんですか?

RF:Drive」のコンセプトは、まさにギターをフィーチャーするってことだったんだ。みんなが知りたがってるんじゃないかな、「Russ FreemanRippingtonsの違いは一体何なんだろう?」って。その質問の答として、僕が普段書いてるようなアンサンブルタイプの音楽じゃなくて、むしろギタリストとしての自分の演奏に焦点を当てようとしたってことなんだ。だから、できるだけ典型的なRippingtonsの音からは離れて、いつもと違うやり方で曲を書いて、今回のソロアルバムがRippingtonsと同じにならないようにしたんだよ。とにかく、別の音楽にしようとしたんだ。それで、僕自身、いつもの音からは離れるようにして、ソロのギタリストに徹したってわけなんだ。

Q3. 今回のアルバムには、どういったミュージシャンが参加したのですか?

RF: Jeff Lorber(ジェフ・ローバー)が参加していて、すごくいいピアノを聴かせてくれてる。それからChris Botti(クリス・ボッティ)がトランペットを演っていて、Eric Marienthal(エリック・マリエンサル)も参加してくれてるよ。Barry Eastmond(バリー・イーストモンド)は、僕と一緒に何曲か曲を書いてくれたんだ。というのも、僕は、いつもと違ったアングルで曲を書いてみたくなってね。何度も言うようだけど、とにかく「Rippington-ish(リッピントンズ風)」にならないようにしたかったんだ。

Q4. レコーディングはどのようにして行われたんですか?

RF: 僕は、自分のスタジオのPro-Toolsでかなりの部分をレコーディングしたんだ。でもそれからL.A.に飛んで、そこでもいくらか録音した。例えば、ホーン・セクションとかはL.A.で録音されたし、Jeff Lorberもそこでいくらか録ったんだ。そうそう、Jeffはここフロリダにも飛んで来てくれて、本当に素晴らしい音を聴かせてくれたよ。そしてその後さらにL.A.でもさらに録ったりしてたね。

Q5. ところであなたはかなりなゴルフ好きと聞いていますが、今回レコーディングに参加したミュージシャンの中で、フロリダでゴルフを楽しんだ人はいましたか?

RF: 多分いると思うよ。えっとね・・・・・・・・・・あれ、いないや(笑)。

(では、ミュージシャンの中ではあなただけがゴルフ好き?)
RF: (笑)・・・いや、そんなことないよ。最近Eric Marienthal(エリック・マリエンサル)もちょっとやり始めたって聞いたよ。それに他のミュージシャンもかなりゴルフやってるって聞いてる。そうそう、Fourplay(フォープレイ)のメンツもやってるって聞いたなあ。僕はゴルフが大好きなんだけど、面白いことに、レコーディングの時に限って言えばあまりにレコーディングに熱中しちゃって、いつもやるほどゴルフをやらないんだよ。でもそれも変えていこうって思ってるんだけどね。

Q6. 「Drive」の中の自分の好きな曲についてコメントをいただけますか?

RF: 面白いことに、このアルバムでは本当にいつもと違ったアプローチをしたから、いつもの自分のアルバムとは全く違った感じをこのアルバムに対しては持ってるんだ。でも、そうだね、自分の気に入った曲をあげるとすると、基本的には、クラシックギターの曲がすごく好きだな。例えば「Bellagio」とかね。あと、「Villa By The Sea」っていう曲があるんだけど、これもすごくいい曲だよ。メロディがすごくいいと思う。自分としては、このアルバムで、いろいろなヴィンテージギターを演奏できてすごく楽しかったよ。例えば、「Boys Of Summer」ではTelecaster(テレキャスター)を弾いているしね。本当に演奏自体をすごく楽しんだんだ。だから、1曲1曲が全く違った雰囲気で・・・まあ、言うなれば、1曲1曲それぞれがみんなユニークってことかな。

Q7. ところで、どうやってアルバムタイトル「Drive」を思いついたのですか?

RF: これも面白いことにね、「Drive」って曲は既に書いてあったんだけど、まだアルバムを何というタイトルにしようか決めてなかったんだ。でも最終的に、その「Drive」っていう曲がアルバム全体の雰囲気にまさにぴったりくるって思ったんだよ。それでその曲から取って、アルバムタイトルを「Drive」にしたってわけなんだ。僕自身、その「Drive」って曲がすごく好きだから、タイトル曲になってすごく嬉しいよ。それに、もちろんライブで演奏しても、ファンがすごく盛り上がってくれてるしね。いい曲だし、演奏するのもすごく楽しいんだ。とにかく、あの曲は、アルバム全体の雰囲気にすごく合ってる感じがするよ。

Q8. ところで、過去のソロアルバムと今回の「Drive」について、作曲のやり方やレコーディングのやり方に大きな違いはありますか?

RF: おおありだね。僕の最初のソロアルバム「Nocturnal Playground」での作曲方法は、いかに僕がバンドと一緒に演るかってことを考えた上で作ったアルバムだったから、よりアンサンブルタイプの作曲方法だったと思うんだ。実際、サックスのためのメロディを書いたり、キーボードやかなりいろいろな部分をオーケストレイトしたりしていたしね。だけど、このアルバムでは、僕はギター以外の他の部分はすごくシンプルにして、ソロを増やして、「これぞギターの醍醐味」っていう部分を聴かせられるようにしたんだ。これは時々Rippingtonsのアルバムでもやってることなんだけど、今回のアルバムでは普段はやらないくらいその部分を深く追求してみたってわけだ。だから、僕は、リードギター以外の部分はできるだけすごくシンプルにして、ハーモニー的に複雑にしたりプロデュースし過ぎにならないようにしたんだ。とにかく、シンプルにってことだね。

Q9. ところで、あなた自身は、自分の音楽をどのように考えていますか?NO.1スムースジャズバンドと言われる一方で、ファンの多くが「単なるスムースジャズ」とは違うと考えているようですが。

RF: 確かに、僕らは「単なるスムースジャズ」を演奏しているわけじゃないな。逆に言えば、それが僕らの成功の秘訣になってると思うんだ。様々な音楽的要素を取り入れるようにしてるから、単純にある狭い分野の音楽を演奏しているわけじゃないし、それに僕はバンドが常に音楽的に成長しているか、新しい方向に進んでいるかっていうのをきちんと確認してるんだよ。それはすごく大事なことだと思うからね。僕は、スムースジャズ界で活動できるってことにすごくドキドキするけど、同時に僕らのファンに対しては、僕達が音楽的に演れることはすべて聴かせたいって思うんだ。

Q10. では、将来ストレートアヘットのジャズをやる可能性はありますか?

RF: そうだね、可能性はないことはないよ。

Q11.
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ところで、Rippingtonsの最新アルバム「Live Across America」には、ウッドストック(1969年)のJimi Hendrixの演奏を意識したメドレー(“Purple Haze,” “Fire,” “Star Spangled Banner,”)が収録されています。当時Hendrixは、反ベトナム戦争ということを意識してこれらの曲を演奏したと言われていますが、昨年のテロ事件の半年後である今年3月に発売になったアルバムにこのメドレーをピックアップしたことで、ファンに伝えたかったメッセージとは何でしょうか?(注:アルバムのカバーには、普段のジャズキャットと一緒に星条旗も掲げられている。)

RF: 確かにこのアルバムの発売は、9月11日のことと照らし合わせれば、ある意味タイムリーだったと思う。でも僕らは、今回のライブアルバムのために、もう2年以上前にこの曲を録音していたからね。思うに、共通点としたら、僕自身がアメリカっていう国に対して抱いている特別な思いだと思うよ。つまり、「本当に特別な素晴らしい場所」っていう思いだね。僕は、本当に自分の国がすごく好きなんだ。だから、ファンに対する僕の感謝の気持ちと同時に、僕らがどれだけ彼らのために演奏できるチャンスを大切なものと考えているか示したかったんだ。この国中を飛び回って、1つのコンサートだけじゃなくて、沢山のコンサートから曲を集めたってことが、今回のライブについての特別なことだと思う。それと、もちろんHendrixも特別だよね。だってもう亡くなって30年近く経つのに、いまだにアイドルなんだから。
どうして僕らがあの曲を演り始めたかは覚えてないけど、ただ、演奏していて楽しいんだ。今となっては、僕らのファンはみんなものすごく気に入ってくれてるしね。

(とすると、一種の「愛国心」がメッセージと言えるでしょうか?)
RF: そうだと思う。この国を飛び回っていれば自然と湧いてくる気持ちだし、また僕らの、ファンに捧げたい特別な思い、こうして僕らにみんなの前で演奏できる機会を与えてくれたことへの感謝の気持ちでもある。僕らは、ライブの興奮を何とかアルバムに収めたかったんだ。それがファンの求めるものだったと思うし。彼らは、エキサイトメントというか、エネルギーがすごく好きだよね。

(Jimi Hendrixは好きですか)
RF: うん、好きだよ。

Q12. ところで、あなたはいつギターを弾き始めたのですか?そして、どうやって今のテクニックを修得したのですか?

RF: 僕がギターを始めたのは1968年、僕が8歳の時だった。そのときは、よくThe Beatles(ビートルズ)を聴いてたよ。The Beatlesは僕のアイドルだからね。だから僕は、The Beatlesの曲と一緒にギターを弾こうと一生懸命になって、それで自分で勉強していったんだ。それからラッキーなことに、家族で、ナッシュビル(テネシー州)に引っ越すことになったんだよ。あそこは、いいミュージシャンがいっぱいいるからね。そこで、僕の父が、すごくいいギターの先生を僕に紹介してくれて、その先生が基本的なことをいろいろと教えてくれたんだ。例えば、楽譜の読み方とかね。それで、僕をギタリストとしての道にしっかりと導いてくれて、それ以来ずっとその道を歩んできてるってわけなんだ。

Q13. 最初のソロアルバム発売前に、他のミュージシャンのレコーディングに参加したことはありますか?

RF: いや、ほとんどないな。僕の最初のソロアルバム「Nocturnal Playground」が僕のミュージシャンとしてのキャリアを軌道に乗せてくれたからね。

Q14. ところで、いつもどうやって作曲をしているのですか?

RF: これはしょっちゅう聞かれることなんだけど、答はこう:「いつも作り方を変えている」。いつも同じ種類の音楽を書いてるわけじゃないから、リズムから思いつく場合もあれば、ハーモニーから思いつく場合もあるし、時にはメロディが浮かぶ時もある。ピアノで作曲することもあれば、ギターで作曲することもある。ピアノはそんなにうまく弾けるわけじゃないけど、でも大抵ピアノで作曲してるかな。それから・・・・・・ギターに切り替えるんだ(笑)。

(どうやったらそんな器用なことができるんですか?)
RF: そうだな、まずハーモニーを書いて、それからメロディを埋めていくって感じかな。そうやって書いた曲は結構多いよ。 ピアノはちゃんと弾こうとしたことはあったんだけど、そんなにうまく弾けなかったなあ。だけど、そのときにはもう作曲できるくらいに充分音楽理論やハーモニーについては知ってたからね。とにかく、ピアノの前にちゃんと座って「曲を弾く」ってことはできないよ。素晴らしい楽器だと思うのに残念だなあ。

Q15. 今後の活動予定を聞かせてください。

RF: Rippingtonsは、今年9月には次のアルバムを作るためにスタジオ入りすることになっていて、そのアルバムは来年の春発売予定なんだ。来年はかなり大規模なツアーをやるよ。

(日本を含めてですか?)
RF: 可能性はあるね。今、そんな話をしているようだから。僕らが最後に行ってからずいぶん経っているんじゃないかな?残念ながら、アメリカ国内だけで忙しいっていうのも現状だけど、とにかく来年行ければいいなって話を進めているところなんだ。

Q16. 最後に、Rippingtonsの音楽を単語一つで表すと何になりますか?

(この質問は彼らが1989年、渡辺貞夫のKIRIN THE CLUB出演のために初来日した際、そのライブの様子を伝えたFM東京「KIRIN LIVE PARADISE」の中で訊かれた質問だ。1989年当時のRussの答えは「FUN」だった。)

RF: そんなの答えられないよ!・・・・・・・いや、わかった。じゃあ「JOYOUS」なんてどう?

ソロアルバムについて、「とにかくRippingtons風にならないようにしたんだ。」と語るRuss。彼が語るとおり、その音は、アンサンブルで作り出されるJazz Travelers? Rippingtons?の音とは全く異なった、1人のひたむきなギタリストの音楽だ。ヴィンテージギターに込められた思いは美しいメロディとなり、それはRussが自分ひとりでキャンバスに描き出す風景となる。微妙な色使いを味わいたいのであれば、やはりじっくりと落ち着いて聴くのがいいかもしれない。

1989年の初来日に続く1991年の2度目の来日から11年、アメリカ・スムースジャズ界におけるRippingtonsの地位は劇的に変化した。数々のメンバー交代が象徴するように音楽的に常に進化を続ける彼らRippingtons、過去発売したアルバムは既に14枚となった。もちろん、リーダーであるRuss Freeman自身の音楽活動も格段に幅広くなっている。しかし、意外なことにRussの音楽に対する思いは全く変わらない。13年前の初来日のインタビューでは、「僕らが楽しんでいれば(have FUN!)、観客のみんなも楽しいと思うんだ!」と率直に答えていたRuss。13年後の答えも、音楽を分かち合う喜び・楽しみを表す単語「JOYOUS」だった。その差は微妙なものだが、明らかに2002年の方がより深みのある「喜び」だ。単純に明るく元気で楽しい音楽というだけではなく、思いを伝えるメロディがありハーモニーがあり、そして観客がRippingtonの面々と分かち合える「至福の時」(JOY)を作り出す音楽とも言えるかもしれない。

さて、かなり大規模なツアーをやる予定とRuss が語る2003年、果たして12年ぶりの来日なるか?このあたりは、現在発売中のRippingtonsの最新作「Live Across America」と8月13日発売の今回のソロアルバム「Drive」(日本発売予定は8月21日)、それに9月レコーディング予定の来春発売となるRippingtonsの次回作にかかっているかもしれないが、ファンの一人としてはぜひ久しぶりの来日公演で「JOYOUS」な音楽を響かせて欲しいものだ。(まい)




リッピントンズ ライブ・レポート
The Rippingtons Web Site

Interview by まい
Photography courtesy from Russ Freeman 

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