4月21日のNARADA JAZZよりの2枚目のアルバム'MORE THAN YOU KNOW'のリリースを目前に来日し,横浜でミニライブを聞かせてくれたキーボーディスト、スコット・ウィルキーのインタビューをお届けします。

Q 今回の来日の主な目的は何ですか?
目的は2つ。1つは新しいアルバムの宣伝。それからもう1つはローランドのための演奏活動かな。
僕は、もうかなり長い間ローランドの専属アーティストとして活動してるからね。

Q だけど、それにしてはファンが気軽に見れる場所での演奏が少なかったですね。実際このHMVのライブだけだし
そうだね。今回の場合、来日の詳細が決まったのが本当にギリギリだったから、ほとんどライブの予定を組むことができなかったんだ。

Q ところで、今回のインストアライブでの演奏曲目を教えてください。
 まず僕の1枚目のアルバム'BOUNDLESS'から'Rivertown'、'Poolside'それと'Waterballoons'。
それから新しいアルバムからも1曲演奏するよ。'NB2000'って曲なんだけど。

Q 'NB2000'・・・これってどういう意味ですか?
 もともと、僕のバンドのベースプレイヤー、Nathan Brownのことなんだ。
この曲をライブでやる時にはNathanをフィーチャーにするし。
・・・とか言って、実は、話せば長い話が裏にはあるんだけどね。

Q 新しいアルバムは、いつレコーディングをしたのですか?
 レコーディングを始めたのは、去年の9月の終わりだったかな?え・・・と、違う違う、10月第2週目に最初の曲を入れたんだ。
それから2,3ヶ月間、12月の中旬くらいまでかかったよ。そして、今年の1月にミキシングをしたんだ。

Q レコーディングをしたのは、どこですか?
 え〜とね・・・ピアノ部分はGreg Karukasのスタジオだった。Gregは僕の友達で、アメリカではすごく有名なピアニストなんだよ。
それから、パーカッションとサックスもGregのところだった。その他のほとんど全部は、僕のスタジオ、Beach Musicでやった。

Q だれがプロデュースしたのですか?
 僕がプロデューサーだよ。
ただ、ピアノ部分のレコーディングにGregがいてくれたのは本当に良かったと思う。
僕はずっと彼の音楽のファンだったしね・・・つい最近友達になったばかりではあったけど。やっぱり音楽的に信頼している人がレコーディングの時にいてくれるっていうのは、最高だった。
僕はピアノでのレコーディングはたった2日間で終わらせたんだけど、それは全部ライブレコーディングなんだ。
本物のピアノを使ったのさ。コンピューターを使っての編集み
たいなことは全くやらなかったし、まさに僕が弾いてるままなんだよ。
だから本当にGregがいてくれて、いろいろとアイディアを出してくれたのは良かったと思う。

Q 新しいアルバムのタイトルは何ですか?
タイトルは、'MORE THAN YOU KNOW'。
1枚目の'BOUNDLESS'と同じく、4月25日にNARADA JAZZレーベルから世界一斉発売される予定なんだ。

Q ところで、レコーディングにはバンドのメンバー以外で、誰か参加したんですか?
 うん、何人か僕のお気に入りのミュージシャンに参加してもらった。
まずPaul Jackson Jr. (彼は'BOUNDLESS'にも参加している)がリズムギターを担当してくれた。
それから僕の大好きなベースプレーヤーのAlec Milsteinが何曲か演奏してる。
彼はここ何年かはJeff Lorberと一緒にやってるんだけど、LAでも屈指の超多忙なミュージシャンだと思うよ。
それからLenny Castroがパーカッションで参加してくれた。
彼は信じられないくらいすばらしいパーカッショニストだ。
そしてEric Marienthalがサックスさ。僕はEricがChick Corea Elektric Bandにいる時からのファンだったんだよ。

Q 1枚目のアルバムと2枚目のアルバムの際立って違う点って何ですか?
今回の新しいアルバムは、本当に短い期間で一気に作り上げたんだ。
'BOUNDLESS'は、実際レコーディングの話が具体的になるまでに何年もかかったし、しかも僕が時間が空いたときに自分の予算で作り上げたものだった。
レコーディングを始めてみても、途中でまた元に戻ってアイディアを練り直して、やり直したり何やかんやといろいろあったものだった。だけど、今回の'MORE THAN YOU KNOW'ついては、初めから終わりまで「本物」のアルバムにしたかった。
だから、僕の本当の気持ちがより沢山こもってると思うんだよ。
前のアルバムよりももっと、実際に僕がピアノに向かって演奏してる感じが伝わると思う。

今回のアルバムでは、いかにもミュージシャンが集まって音楽をやってるって感じなんだよ。
シーケンサーなし、ドラムマシーンも使わない、もちろんコンピューターでの編集もやってない。だから本当に僕の気持ちが素直に表現できてると思うんだ。
しかも、'BOUNDLESS'よりもずっと「動き」があるしね。
多分聴いてもらえればすぐに気がつくと思うけど、ドラムの音が前よりもグッと響いているし、グルーヴがより際立ってるからね。思うにアルバム全体がノッてるんだ。
新しいアルバムのもう一つの特徴としては、ミキシングエンジニアのDanny Leakeの存在があげられると思う。
Dannyはここ10年くらいずっとStevie Wonderと一緒にやってたんだけど、
今回は僕のミキシングのためにLAのMad Hatter(ChickCoreaのスタジオ)に飛んできてくれたんだ。
Dannyは本当に素晴らしいエンジニアでね、僕自身、プロデューサーとして座ったまま、アルバムのすべての音に集中することができたっていうのは、本当に楽しかった。Dannyは本当にすごく良い音に仕上げてくれたと思う。
今回のアルバムの音がこんなに素晴らしいものになったのは、Dannyが最終のミキシングを手伝ってくれたからなんだ。

Q ご自分が思う'MORE THAN YOU KNOW'の中の一番お気に入りの曲はどれですか?
そうだな、それを答えるのはちょっと難しいね。
僕が今回のアルバムを気に入ってる最大の理由は、このアルバムにはいろいろな要素が入ってるからなんだ。
もちろん、'NB2000'や'Sign of the Times'、'Back from the Beach'みたいに僕がよく書いてるような雰囲気の曲もいっぱいあるし、'Fruit Sandwich'みたいなノリのいいラテン調の曲もあるしね。
そうそう、'Fruit Sandwich'は、僕がLenny Castroに合わせてアレンジしたから、ティンバリやコンガを取り入れてるんだ。
あとは'Whale Song'っていう、15年前に書いた曲も入ってる。
これは僕のお気に入りの1曲なんだけど、シンプルなバラードで、実際にはアルバムの一番最後の曲、アルバムが終わる本当に直前に聴ける曲だよ。

でも、どうかな、わからないよ。いつもこのアルバムを聴くたびに、前よりも好きなところがいろいろ出てくるからね。
そう・・・聴く人がどんな気分かにもよると思うよ。

Q 今回のレコーディングでの印象的なことは何ですか?
まず、LennyとEricと一緒にレコーディングできたのは、すごく楽しかった。僕はずっと彼らの音楽のファンだったからね。
だから僕の音楽に参加してくれたってことが最高だった。
あともう一つは、グランドピアノを弾いたってこと。
僕はかなり長い間、キーボードとかシンセサイザーを中心に演奏をしてきたけど、僕自身の本当の気持ちとしては、むしろまだピアニストだからね。
だって僕はそれで成長してきたんだから。だから2日間グランドピアノで演奏したってことは、感動だったよ。
多分、それが今回のレコーディングの中で一番気に入ってるところだな・・・ピアノの生演奏でのレコーディングがね。

Q 今年のツアーの予定を教えてください。
 いくつかジャズフェスティバルに出演する予定だよ。今年の夏は、できるだけ多くライブで演奏したいと思う。
バンドの音もすごくしまってきてるし、'MORE THAN YOU KNOW'の音に合わせて、実際にはパーカッショニストを加えるつもりだしね。

次回来日するときには、もっと余裕をもって、もっとライブで演奏できるようにしたいと思う。
今回の来日は、日本が初めてだったバンドのメンバーにとってはすごくいい経験だったと思うし、ローランドとの仕事でいくらか演奏もできたしね。

Q 新しいアルバムの最も魅力的な点はなんですか?
ファンキーで、お気楽な感じで、しかも自分に素直な音だから、とにかく聴くのがすごく楽しいと思う。
アメリカの友達が聴いたときには、とにかく僕らが楽しんでレコーディングしてるのがよくわかるって言ってたよ。
実際、アルバムの中の1曲には僕の笑い声が聞けると思う・・・ピアノの上のマイクに入った僕の笑い声なんだけどね。
このアルバムの音にはドキドキさせられるよ。だから僕がレコーディングを楽しんだのと同じ位、ファンの人達も楽しんで聴いて欲しいな。

Q 他に何かコメントはありますか?
僕のアルバムをサポートしてくれたサイバーフュージョンのみんなに感謝したいな。本当に素晴らしいことをいろいろと言ってくれたからね。
僕にメールをくれた多くの人が、僕のアルバムのことをこのWEBで知ったって言ってた。
本当にありがとう!

Q あなたにとってライブでの演奏とは何ですか?
僕にとってライブっていうのは、まさに音楽が生まれるところなんだ。
僕は確かにアルバムを作るのは好きだけど、それは飛び出して行ってライブでまた演奏するための、言い訳でしかないらね。
僕がミュージシャンとして気に入ってることは、ステージの上で演奏できるチャンスをもらえるってことなんだ。
ありがとうございました。



さてさて、Scott Wilkie Instore LIVEにいらっしゃった方のうち、CyberFusionをチェックしていらっしゃった方はどのくらいいたのでしょうか?
実は、私のすぐ隣でさりげなくリズムを取っていた方なんぞは、その内の一人だったりして・・・。

ライブが始まる時間には、40〜50人程の人々が店内でステージに見入っていたと思います。

ScottとMatthewは、共にステージに上がり、とてもリラックスした表情でデビューアルバム「Boundless」から「Rivertown」、「Poolside」、「Water Balloons」、そして4月25日発売予定の新しいアルバム「More Than You Know」から「NB2000」を演奏しました。

彼独特のフレーズとハーモニー、リズミカルなサウンドは本当に人を惹きつけますね。
(しかもなんだか見た目もかっこよかったりしますから、思わず見入ってしまいました。)
ファンキーでグルーヴィーな彼の音楽は、まさにコンテンポラリージャズの王道ではないでしょうか。
4月の新しいアルバム「More Than You Know」もすごく期待できると思います。(既にCD‐NOWでは先行予約受付中です。)

Benoit好きな方も、Sample好きな方も、Grusin好きな方も、とりあえず聴いてみてください。きっと気に入ると思いますよ。

Scott Wilkie Bandは、Scott(keys&p)、Matthew(g)、Nathan(b)、Dave(ds)の4人が中心ですが、ライブではサウンドにより厚みを持たせるためにSteve(per)を加えています。彼らのサウンドをぜひパワフルなライブで楽しみたいという方は、以下のジャズフェスティバルへどうぞ。

5/19-21 Newport Beach Jazz Festival
Scott Wilkie Band/Eric Marienthal Band/Joe Sample &LalahHathaway/David Sanborn/
Paul Taylor/David Benoit/Chaka Khan/Jonathan Butler/etc.

5/27-28 Maui Music Festival
Scott Wilkie/Norman Brown/David Benoit/Peter White/Dave Koz/etc.

P.S.・・・と書くと、Scottは性格もパーフェクトな二枚目ミュージシャンに思えますが、それは大きな間違いです。彼は、私の知るミュージシャンの中でも、飛びぬけてめちゃくちゃおかしな人です。ミュージシャンじゃなかったらコメディアンになっていたと思います。
(ということを、本人に直接言ったら、なぜか満足気な顔をしてました・・なんなんだ!?ま、そんな見た目とのギャップが魅力だとも思いますが。)
彼に会ったら、気軽に声をかけてあげてください。(まい)

スコットのライブを見るのは昨年のローランドのイベントに引き続き2回目です。
今回もフルのメンバーによる演奏ではなく、ハードディスクレコーディングした音をバックにキーボードを弾くというスタイルでした。
昨年見る前は、ライブ的な面白さは半減するのではないかと思ってましたが、実際に見てみたら彼のキーボードでの派手なアクションや表情等のパフォーマンスが発揮され見ていて楽しいライブでした。
昨年のそういう経験があるので、彼のパフォーマンスが楽しみであり、実際このコンテンツの写真のようにあるときは上半身をのけ反らせて足をあげたり、あるときはキーボードをいつくしむようなパフォーマンスが見られました。
彼の1stアルバムの「BOUNDLESS」NARADA(72438-47025-2-6)'99に収録されている「Rivertown」が流れて来たときは、シャッターを切る手が思わず止まり、美しいメロディとハーモニーに包まれてしまいました。ホント、この曲は名曲です。
寂しげで、切ない美しいメロディは心をくすぐります。

インストアライブでフラ〜ッとお店に入ってきたお客さんも思わず足を止めて、聞きいっていましたねぇ。
この次はバンドの演奏で1時間以上のライブを楽しみたいです。(アスワン)

Feb 20, 2000(at HMV YOKOHAMA、JAPAN)
INTERVIEWED by まい & アスワン
PHOTO by アスワン
Copyright 2000 by CyberFusion

SCOTT WILKIE
http://www.scottwilkie.com/home.html