私がミーハーなのは今日に始まったことではない。小学生の頃はまんがを見てため息をつき、アニメを見てテレビの前でキャーーーーーー!!!!と叫んでいた。ミーハーでいることって、すごくエネルギーが出てくる。その「好きで、好きで、たまらないのーーーーーーーー!!!!!!!!」というエネルギーをもってすれば、なんでもできそうな気がする。しかし、普通は大人になったらミーハーは直るものだと思っていたが、私の場合は直らなかった。あるお方にはまってしまったのだった。きっかけはその人のおじぎを見たときだった。 だいたい高校時代ミーハーしていたバンドはロック系だったせいもあるのだが、ドラムってうるさくていつも同じようなことをやっていて、体力だけあればできそうだと私は思っていた。大学に入ってスクェアを初めて聴いたが、ドラムが細かいなとは思ったけど、そのメロディーライン、全体的な雰囲気が目新しく感じたということであって、ドラムについてはなんにも思わなかった。
家に帰って、その年のニューアルバム「NEW-S」のブックレットをを見て、ああこういう人なんだ、と確認した。写真では、彼、則竹裕之はとても繊細で神経質そうに見えた。あの演奏とあのお辞儀とこの写真。この複雑さが私の心にひっかかった。 今思うと、あのお辞儀を見たときに、カチリと音がしてひとつ新しい世界の扉が開いたような気がする。則竹さんのお辞儀というのは、彼自身の音楽性とやはり切っても切り離せないものだろう。乙女座ときいてますます納得。今では律儀にお辞儀をする彼、ドラムソロの時の千手観音の彼、はにかみながら話す彼、カウントを出すときのしっかりした声、タァーンというスネアの力強い音、キラキラした水のようなシンバルの音、全部が則竹さんなんだなと理解できるようになった。 フュージョンを聴きはじめて2年、それなりにいろいろ好きだと思って聴いていたつもりだったが、あの日を境にほんとうのフュージョンの世界に足を踏み入れ始めたのだと思う。それまで聴いていながら感じ取っていなかったフュージョンの世界の感性に触れた衝撃は、くさびのように深々と打ち込まれたのだった。 おじぎ。それが則竹さんにミーハーしはじめたきっかけだった。(美芽) |