●骨太いストレート系 ○明るく爽やか系 ○骨太系と爽やか系の中間 ○R&B ○ブラック系 ○歌物・NAC/AOR 系 ○ラテン系(□ブラジル系 □サルサ系 □カリプソ系) ○ユーロ系 ○JAZZ系 ○JAZZとFUSIONの中間系 ○ブルース系 ○ロック系 ●オーケストラ系 結論から言ってしまうとブレッカーのサックス、アルバムの構成ともに最高の出来である。マイケル・ブレッカーのリーダーアルバムとしてベストの作品と言ってしまってもよいと思う。 アルバムを聞くまでは15人編成のラージ・アンサンブルということで、「American Dreams」の延長線上あたりを想像していたのだが、実際に届いたのは全く別次元の音だった。オーケストラをバックにマイケルがサックスを吹くというよりも、音の絶対的中心はあくまでもマイケルのサックスである。その様々な表情を見せるサックスに綿密にアレンジされたアンサンブルが、まるでその場で音に反応しているのではないかと思わせるようにまとわりついていく。このアルバムは全てスタジオでのライブ・レコーディングで1曲だけ編集の手が入っている以外は一切オーバーダブもされていないのだという。その当たりもフロントのサックスとバックのアンサンブルが見事に融合している理由なのだろう。 そしてこのアルバムで忘れてならないのはアレンジを担当しているギル・ゴールドスタインの存在だ。ギル・エバンスの影響を感じるような木管楽器を導入した柔らかい音色のアンサンプルはブレッカーとのEメールによるLogicのファイルの交換を通じて練り上げられていったという。伝統的なジャズでもなく、クラシカルにもならず、多彩な音色、ファンク系を含む多彩なリズムを導入して2003年の音に仕上げられており、ギルがこのアルバムのもう一人の主役と言ってもよいだろう。 またこのアンサンプルのリズム陣を固めるPMGでもドラムを叩くアントニオ・サンチェスとジョン・パティトッチ、最近注目のギタリスト、アダム・ロジャーズのコンビネーションもひとつ間違えると陳腐になりかねないラージ・アンサンブルというフォーマットに活き活きとした息吹を吹き込んでいる。 最後になんと言っても素晴らしいのがマイケルのソロだ。この1-2年のライブでの好調振りをそのまま反映しており、自由自在に吹きまくっている。特に「Scylla」でのソロはマイケルの無数にある演奏の中でもベストのひとつに数えていいできだと思う。 日本盤ボーナストラックは無伴奏ソロの「Monk's Mood」。輸入盤の方が安価で出回っているのだが、マイケルファンとして無伴奏ソロを入れられるとはずすわけにはいかない。ただし3分半ほどの短い演奏でちょっと物足りない。無伴奏ソロについては「Directions in Music」やライブでの演奏の素晴らしさからすると今後是非、これで1枚のアルバムを制作してくれることを望みたい。
(橋 雅人)
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