樋沢達彦,バカボン鈴木,クリス・シルヴァースタイン(b), 福田重男(p)
さて、本作品はMALTA氏の約2年半ぶり、通算25枚目となるオリジナル新作です。前作「アパシオナド」ではキューバンリズムを全面的にとりいれ、新たな局面を提示したかのような内容でしたが、今作ではタイトルが示すように、再び彼本来のスタイルに帰り、さらにサポートメンバーに往年の「Hit & Run」の名を冠することによって、原点に戻ったことを内外に(?)示す内容となったようです。前作もある意味で彼らしい作品だったのですが、少々やりすぎた?と感じる向きには今回はうれしい新作といえましょう。 しかし、聴いてみると案外「重い」印象なのです。1曲目こそいかにも彼らしい、おなじみのノリで飛ばしますが(私は何かのセルフカバーか?と思ったくらいです^^;)、2曲目以降、わりと重厚な曲が並びます。それもフュージョン風あり、ファンク風ありとスタイルも様々で、きわめつけは「リンゴ追分」のカバー。これはどうかなぁ?と思ったのですが、なかなか渋いジャズバラードに仕立ててあり、私は結構気に入りました。メンバーも曲作りに積極的に参加しており、アルバム後半は各メンバーの書いた曲を中心に配置してますが、こちらの方がむしろ新鮮な感じがします。 サウンド的には、あくまでバンドサウンドにこだわるかのようで、特にドラムの音がいかにも「人が叩いている」音がすることに好感を持てました。 彼の全盛期の作品といえば「ハイプレッシャー」や「オブセッション」がすぐに思い浮かびます。現に当時は私の周りでもおよそジャズやフュージョンに縁のない人たちがこぞって彼を聴いたものです。タイトル「ワン・モア・チャンス」は聴く人を勇気付ける言葉であると共に、彼自身の決意表明でもあるのでしょうか?しかし「夢よもう1度」なんて考えると妙にさびしいもんがありますが…。今作はその頃の作品のような適度な爽快さは感じるものの、わりと重めな部分に気を使っているように聴こえるのは、演るほうも聴くほうもそれなりに歳をとった、ということでしょうか? ○今年の夏はこれのお世話になりそうです・・・!? (セリエJ)
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