解散してしまったWeather Reportのトリビュート盤です. プロデューサーが、ジェイスン・マイルスで彼がアレンジも行っているので彼が中心となってサウンドを作っている様です. WRの曲をカヴァーするというのは過去に何度もありました.ざっと思いつくだけで、マンハッタントランスファーの「バードランド」、日本のプレイヤーズの「8:30」, マーカスミラーのスラップによる「ティーン・タウン」.いつもカヴァーの興味は一点でした. WRの曲は、イントロを含めて、一つの楽器(又は音色)だけで、曲を作っていないことです.テーマにおける曲作りにしても、サックス、ベース、そして音色の違うシンセが絶えず、入れかわり立ちかわりテーマのメロディを演奏していきます. そのため、どこまでがテーマのメロディなのか、バックのハーモニーなのか区別が付かない場合があります. それを、マントラが「バードランド」を歌った時は、「ベースのこんなとこまで歌っている」「ここのキーボードのパートはバックのハーモニーだと思っていた」と、聴いていてちょっと不自然な感じをした覚えがあります. つまりWRをカヴァーする場合、テーマのメロディの楽器割りというのが一つのポイントになるわけです. マントラの様にボーカルという一つの楽器で全てをやってしまうと違和感を感じたり、全く同じ楽器割りにするとコピーで終わってしまったりと、実に手強いのがWRの楽曲だと言えます. この作品は、敢えて冒険を避け楽器の割り振りはオリジナルに近い形で行ってます.中にはベースのパートをギターがやったりという違いはあります. オリジナルの完璧なまでのアレンジに、敢えて挑戦してアレンジを変えているという姿は評価できますネ.普通のミュージシャンだったらWRのアレンジは完成された形で、敢えてこれに手を加えようと思わないもんね 次に面白いのは、ミュージシャンが最近では少なくなったオールスター形式. もう一曲毎に組み合わせが変わります.オールスターの特色として各ミュージシャンの個性が没になるという過去の傾向があり、名前の多さの割りに面白くなかったという印象です. そういうファンの評価のせいか最近では珍しく超豪華オールスターミュージシャンの顔ぶれです. でも、オールスター物と20年係わってきた経験からすると、オールスター物で各個人の個性を期待する方が無理、、、 ミュージシャンは、皆それぞれを尊敬しているんですねぇ.セッションすると、「自分がぁぁぁぁ」というよりは「あなたがどうぞ、、、」となってしまうのは、国籍を問わず人間の性. 個性が出るとしたら各パートのソロ位なもので、それは当たり前、、それ以上は期待しちゃいかんのですよ. そういう割り切りで聴くと、結構面白物で、反対に各人の個性が見えたりします. 全体的に何も考えず聴いてみると、WRは名曲だらけですねぇ、、、、、この作品に収録しなかったもので名曲は一杯あります. 私個人の趣味では「ミステリアストラベラー」がWRの中でトップクラスに好きなアルバムなんですが、その中でもタイトル曲と、「Cucumber Slumber」が入っていてしかも後者は、ベースはMarcus Millerと、もう、のけぞり物です. この作品は、WRファン、そしてWRを知らない人、どちらも楽しめる要素が一杯詰まってます. 最近ではピカ一の企画物だと確信します. ☆脳味噌錯乱級!!買いッ!!.(アスワン)
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